先回までは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス新法」といいます。)の適用対象となる事業者及び本法において規制されている2つの義務規定について紹介いたしました。今回は、フリーランス新法における7つの禁止行為について解説いたします。
1 特定業務委託事業者の遵守事項(第5条)
特定業務委託事業主(発注事業者)が特定受託事業主(フリーランス)に対し、1か月以上の期間の業務委託契約をした場合、以下の7つの行為が「禁止行為」として定められています。この1か月とは、1か月未満の期間の業務委託契約が複数あり、結果的に継続して1か月以上の業務委託がある場合にも該当します。
⑴ 受領拒否の禁止(本条第1項1号)
フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、発注した物品の受領を拒否することを言います。発注の取消しや納期の延期などで納品物を受け取らない場合も受領拒否に当たります。
⑵ 報酬の減額の禁止(本条第1項2号)
フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、発注時に決定した報酬を発注後に減額することをいいます。この減額は、業績の悪化や経済情勢等の理由にかかわらず禁止されています。
⑶ 返品の禁止(本条第1項3号)
フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、発注した物品等を受領後に返品することをいいます。
⑷ 買いたたきの禁止(本条第1項4号)
発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めることをいいます(「通常支払われる対価」とは、同種又は類似品等の市価とします。)。
⑸ 購入・利用強制の禁止(本条第1項5号)
正当な理由がないにもかかわらず、フリーランスに発注事業者の指定する物(製品・原材料等)や役務(保険・リース等)を強制的に購入又は利用させることをいいます。
⑹ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(本条第2項1号)
発注事業者が自己のために、フリーランスに対して金銭や役務、その他経済上の利益を不当に提供させることをいいます。例えば、報酬の支払いとは独立して行われる、協賛金などの要請がこれに該当します。
⑺ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(本条第2項2号)
フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、受領後にやり直しの追加作業を行わせる場合にフリーランスが作業に当たって負担する費用を発注事業者が負担しないことをいいます。
2 罰則等
今までに紹介した2つの義務規定(第3条及び第4条)と7つの禁止行為(第5条)に該当するときは、各庁より助言・指導・勧告が行われます。勧告に従わない場合は命令及び発注事業者名の公表が行われ、さらに命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
次回は、フリーランス新法第三章に定める特定受託業務従事者の就業環境の整備について紹介いたします。