本稿では、課徴金制度の改正について解説いたします。
1 課徴金制度の改正
⑴ 課徴金の額の加算(8条5項・6項)
内閣総理大臣(消費者庁長官)は、優良誤認表示行為、有利誤認表示行為となる表示について、原則的には、対象商品・対象役務の売上額の3%に相当する額を賦課する課徴金納付命令を発することとされています(8条1項)。
しかし、過去に課徴金納付命令を受けたにもかかわらず違反行為を繰り返す事業者は、課徴金の制裁による抑止が十分でないと考えられることから、割増算定率を定めることとなりました。
具体的には、事業者が、基準日から遡り10年以内に、課徴金納付命令を受けたことがあり、かつ、当該課徴金納付命令の日以後において課徴金対象行為をしていた者である場合には、対象商品・対象役務の売上額の4.5%に相当する額を賦課する課徴金納付命令を発することとされました(8条5項・6項)。
⑵ 売上額の推計(8条4項)
事業者が、課徴金の計算の基礎となるべき事実を内閣総理大臣(消費者庁長官)に報告しない場合(帳簿書類の一部がもともと欠落している場合も含みます。)、通常に比して、調査に時間を要してしまうことが想定され、場合によっては課徴金納付命令を適正に発することができない事態も予想されます。
そのような不都合を回避するため、他の法律(法人税法・所得税法・独占禁止法等)でも用いられている売上額等の推計が、景品表示法でも定められました(8条4項)。
2 景品表示法の令和5年改正は、その他にも細かい改正(返金措置における電子マネーへの対応等)を含んでいますが、重要部分の解説としては以上で終了いたします。