1 使用者の労働時間管理の義務と現状について
厚生労働省作成の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下「ガイドライン」といいます。)」によると、労働基準法において、労働時間(法32条)・休日(法35条)・深夜業(法37条)等について規定を設けていることから、使用者は労働時間を適切に管理する責務があるとされています。
しかしながら、現状をみると、事業形態の多様化や使用者の法令の不知等により、時間管理が適正に行われておらず、後述する労働者の自己申告制の労働時間管理による不適正な運用も相まって、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払い問題も多く発生しております。
2 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置とは
上記1の責務に対する具体的な労働時間管理の方法は以下のとおりです(ガイドライン抜粋)。
⑴ 原則的な方法
・使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
⑵ やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
・使用者は、自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと。
・使用者は、自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間を都度補正をすること。
・使用者は、労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること。
⑶ その他
賃金台帳の適正な調整、労働時間の記録に関する書類の保存(3年間)等があります。
3 どのような時間が労働時間に該当するのか
上記2で使用者が管理すべき労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示により労働者が業務に従事する時間のことをいいます。労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的な視点から評価します。
次回は、労働時間に該当するか否かの具体例を紹介いたします。