先回に引き続き、労働時間に該当するか否かの具体例をいくつかのパターンに分けて、紹介いたします。
パターン4 着替え時間
着替え時間が労働時間に含まれるのかは、労働基準法では明記されていません。ただし、使用者の指示があったのかを実態により判断します。具体的には、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え、朝の清掃、朝礼等)や業務終了後の業務に関連した後始末(後片付け等)を事業場内で行った際は労働時間にあたるとされます。
上記着替え時間を労働時間とする場合には以下の注意点があります。
➀ 就業規則等に作業着や制服等の着用が義務である旨の記載があること
➁ 着用が簡易なものでないこと(帽子・エプロン・ジャケット等のみの着替え)
➂ 事業所内での着替えが義務化されていること(自宅で着替えが可能な場合は、労働時間に該当しません。)
パターン5 タイムカードの取り扱い(タイムカードの前後・早出・居残り・さぼり時間の考え方)
タイムカードに打刻された時間は「出社した時間」及び「退勤した時間」の判断材料となりますが、労働者が打刻時間外に使用者の指揮命令下に置かれて作業を実施している状況があればその時間も労働時間に加える必要があります。上記パターン4と同様に、労働者が使用者の指揮命令下に置かれる前にタイムカードに打刻しておく必要があります。
ただし、タイムカードの打刻時間内に、労働時間ではない時間(例えば、始業終業時間外での従業員同士の世間話や喫煙休憩等のさぼり時間等)がある場合は、その立証責任は会社側にあります。労働者からの未払い賃金請求があった場合は、タイムカード(書面)による証拠が重視される場合が多いため、労働時間の管理とは別に、「残業や早出をする場合は、上司に事前に申告書を提出し、上司からの承認が得られた場合のみ残業や早出を認める」等のルール設定し、周知しておくことで労働者による不適切なタイムカード打刻を防止することが出来ます。
パターン6 出張時間
出張、外勤営業もしくは在宅勤務等の労働は労働時間の算出が困難である場合が多く、この場合は労働基準法第38条の2に定められている「事業場外労働に関するみなし労働時間制」が適用されます。同みなし労働時間制は労使協定を締結することで、事業場外で労働した場合の労働時間を所定労働時間労働したとみなすことができる規定です(みなし労働時間が所定労働時間を超える場合は別途規定があります。)。
出張中の移動時間は労働拘束性の程度が低く、原則として労働時間に該当しないとされています。ただし、以下の場合には労働拘束性があると判断される場合があります。
・上司が出張に同席している
・移動中も常に業務対応をしている状況がある
・業務に必要な物品等の運搬業務を兼ねている
以上、パターン別に労働時間に該当するか否かを紹介して参りました。労働者の勤務の実態に即して判断されるケースがほとんどです。判断に迷う場合は弁護士・社労士へのご相談をお勧めいたします。